2008-02-29(Fri)

わからぬままに…

emtpy street sign

手を のばしてみる
その手の 指さすむこうに
なにが あらわれるか……わからん

足を踏みだそうと 宙に浮かす
その足が着地する世界は
わたしを どこに導くか……わからん

それが まったく わからんので
それが まったく わからんからこそ
まず 手をのばし 足を踏みだす

「わからん」が原動力

                        工藤 直子 『わからん』
                        「工藤直子詩集」(ハルキ文庫)




余儀ない仕事の日程以外にも 明日やることや 先々の予定で
びっしりと手帳を埋めないと 気のすまないひとがいます
そうしないと 安心できないのでしょう
実は そうやって自分の未来から未知の可能性を締めだして 
限定された窮屈なものにしてしまっているのに…

何が起こるか どこへ着地するか まったくわからぬままに
とにかく手をのばし 足を踏みだしてみる……すると 自由な時間が動きはじめます☆



2008-02-28(Thu)

ぼくが死んでも

Dock Leading to Beautiful ocean Water

ぼくが死んでも 歌などうたわず
いつものようにドアを半分あけといてくれ
そこから
青い海が見えるように

いつものようにオレンジむいて
海の遠鳴り数えておくれ
そこから
青い海が見えるように

                    寺山 修司 『ぼくが死んでも』
                    「少女詩集」(角川書店)




葬送の数々のセレモニーは すべて残された側の慰めと心の区切りのためのもの
旅立つ側には 特別なレクイエムなどきっといらないのです
いつもと同じ青空や… いつもと変わらぬ青い海…
いつもと同じオレンジの香り… そしていつもと同じ海の遠鳴りや街のざわめき…
何ひとつ変わらぬままで 逝くのがいいのでしょう☆




2008-02-27(Wed)

どれほど苦い涙を…

evening decline

どれほど萱(かや)を刈りつづけたら
あの地平線は見えてくるの?
どれほど重い車を引いたら
あの曙(あけぼの)へお引越しできるの?
どれほど高く跳びあがったら
高貴なつばさが芽生えてくれるの?
どれほど苦い涙を泣いたら
あの潮騒にまじり合えるの?…


                           新川 和江 『どれほど苦い…』
                           「新川和江全詩集」(花神社,2000年)




萱を刈りつづけることや 重い車を引きつづけること…
懸命に高く飛翔しようとすること…
日常の営みの努力に あまりに埋没しないことが むしろ地平線や曙に到達し
苦い涙も潮騒の一部として 散らしてしまえる秘訣なのかもしれません☆




2008-02-26(Tue)

空の青の彼方に

shutterstock_5213386

空の青さをみつめていると
私に帰るところがあるような気がする
だが雲を通ってきた明るさは
もはや空へは帰ってゆかない

陽は絶えず豪華に捨てている
夜になっても私達は拾うのに忙しい
人はすべていやしい生まれなので
樹のように豊かに休むことがない

                      谷川 俊太郎 『六十二のソネット』#41(抜粋)
                      (1953年,創元社)





空から降ってきた陽の光は 雲を通って明るさを増し
地表に惜しみなく降りそそぎます
雲に濾(こ)され 
余分なものをすべて削ぎおとされ より透明となって…

その陽光のもとで しかし わたしたちは 捨てるどころか むしろ拾うのに忙しい
あらゆるものを…
樹のように 風に吹き払われるままに 静かに息づくことがないから
豊かに憩う暇もないのでしょう☆




2008-02-25(Mon)

墓銘碑

lonely tree and mirror river

 石の上に月を
 雪の上に月を
 我が こともなき
 静寂(しじま)の中の憩い哉(かな)

                                    檀 一雄





小説『火宅の人』中 主人公が夢の中で見た己の墓銘碑として記された夢中吟です
空漠の魂の周囲に サラサラと降りつむ宇宙塵のような音が聴こえ
その幻聴が鳴り止むと 降りつむ雪の中に地上の自分の墓石が見え
そこに この墓銘碑が記されている…という設定です

雪に半ば埋もれるようにひっそりと佇む墓石を
白く照らす月光と あたりを包む無音の静寂…
忙しく騒がしい人生の果てに葬られる場所は こんな静寂の場であってほしいですね☆






2008-02-24(Sun)

孤独に飽きたら…

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私が忘れた歌を
誰かが思い出して歌うだろう
私が捨てた言葉は
きっと誰かが生かして使うのだ

だから私は
いつまでも一人ではない
そう言いきかせながら
一日じゅう 沖のかもめを見ていた日もあった

                    寺山 修司 『ひとりぼっちがたまらなかったら』
                    「人生処方詩集抄」(立風書房)




虚しく風にまぎれて だれの耳にも届かなかったかにみえる言葉や歌も
いつか だれかが拾い上げて生かしてくれるかもしれません
自分だけが それを完成するのだと思うから 黙殺されると虚しいのです
いつか だれかが引き継いでくれる…そのことであなたは決して一人ではないのです☆




2008-02-23(Sat)

祈り

A Men is Praying At The Wailing Wall

 自我を折ることが出来て
 初めて祈ることが出来る

                              吉野 弘 『折と祈』
                              「吉野 弘全詩集」(青土社)




多くの場合 わたしたちが神仏に捧げる祈りですらも
自我の発するお願いの集大成のような連祷(れんとう)であることが多いでしょう
「ああしてください」「どうかこうしてください」と神に指図するかのような…
雄弁な自我を黙らせ 黙って高みからの声に耳傾けるには
まずは日常の思い煩いから脱却して 静寂を自分の裡に取り戻す必要があるのでしょう☆




2008-02-22(Fri)

気配

Snow drifts

(きこ)えてくる
真白い麦畑で麦を踏んでる足音
その足あとのついた地面の下で
モグラは一瞬胸苦しい夢をみる

雑草の根がほんの少し身体をゆする音
地下水がほんの少し勢いを増す音

大雪 小雪 白雪 吹雪 初雪 夜雪 深雪(みゆき) 細雪(ささめゆき)
こな雪 つぶ雪 わた雪 みず雪 かた雪 ざらめ雪 こおり雪

がたん、すうー
「だあれ戸棚あけてるの?
おひなさま?
おひなさまはまだですよ」

                          川崎 洋 『音』
                          「川崎 洋詩集」(ハルキ文庫)



まだ地表は真っ白な雪に覆い尽くされていても
少しずつ春の近づく気配は 冬眠しているモグラにもなんとなく感知されます
雑草の根がかすかに身じろぎしたり…
雪解けの地下水が少しだけ水かさを増したり…
その時点では まだ半睡状態のモグラにとっては それは歓びの予感であるよりも
むしろ一瞬の胸苦しい夢でしかないのかもしれません

わたしたちが忍従や苦闘の日々から解き放たれるときと 似ているかもしれません
変化が徐々に近づいてくる予感が あまりにかすかなうちは
それは何かが起ころうとしている予兆でしかなく
わたしたちが感じるのは むしろ変化への怯えなのかもしれません☆





2008-02-21(Thu)

口をつぐめば

boat on the water

ぼくの舌のしたを流れる川、
ひとの想像もしない水、ぼくの小さな舟、
そして、
カーテンをおろして、お喋(しゃべ)りしよう。

                      ポール・エリュアール 『川』
                      山崎 栄治 訳




とりとめなく語り続ける舌を休ませ 
唇を閉じてみれば 
そのずっと下方に もっと豊かな水脈があるのに気づくでしょう
想像もしなかった深みに とうとうと流れる川があり
そこに あなたの小さな舟が浮かんでいます
カーテンを閉ざし ゆっくりとその小さな舟を流れに漕(こ)ぎだしてみましょう☆




2008-02-20(Wed)

心の扉が開くとき

lightning

心の扉が開いていた、不意に、知らぬまに
どこからか 苦痛の一撃がそこに押し入った――
その恥(はずか)しさで わたしの心の奥深くに隠されていた
生命の源泉(いずみ)が解き放たれた。
高所から勝利の調べが たちまち
地平の彼方の道を通って 心に降りてきた、
歓喜(よろこび)に彩られた光が
みるみる 黒い雲をつきやぶり 心にひろがった、
小さな[病室の]穴ぐらの屈辱は消え去り、
ひろびろとした世界の座に 自分の居場所を見つけた… (後略)

                    ラビンドラナート・タゴール
                    「恢復期」より 森本 達雄 訳





ある深み以上には入れないように 固く閉ざされたわたしたちの心の扉…
それを突き破ってそこから先に押し入ることができるのは
あるいは 苦痛だけかもしれません
激しい苦痛の打撃が その堅固な守りを突き破って扉をひらくとき
その奥深くに閉ざされていた生命の源泉は 初めて解き放たれ 
わたしたちを真の歓喜で満たしてくれるのでしょう
見ようとしない 自らの内部の最も奥深いところまで下りてゆかねば
ほんとうの歓びに出逢うことはできないのです☆





2008-02-19(Tue)

雨の言葉

raindrop on grass

雨の言葉が
私に氾濫(はんらん)する

(しずく)によって吸い上げられ
雲の中に押し上げられ
私は雨となって
開いた
真っ赤な罌粟(けし)の口もとに降る

                           ローゼ・アウスレンダー
                           加藤 丈雄 訳


Regenwöter
überfluten mich

Von Trpfen aufgesogen
in die Wolken geschwemmt
ich regne
in den offenen
Scharlachmund
des Mohns
                 Rose Ausländer “Regenwöter"




そぼ降る雨のかぼそい音や しのつくような雨音……
雨の天蓋に覆われて ひとり耳傾けるとき
ひとは その雨音の中に 自らの裡なる言葉を見いだすのでしょう
そのようにして 見いだされ 溢れ出た言葉は
いったん雨の滴のなかに還元され 雲の中に吸い上げられ
洗われた後 再び天空から降りそそぐのがよいのです☆

*<真っ赤な罌粟の口もと>はどうやらアウスレンダーにとっては
  俗世のよくしゃべる唇の象徴のようです




2008-02-18(Mon)

見えない花

Daisies

そこに
見えない花が咲いている
教えてあげよう
ぼくの足もとだ

数えてみると
花びらは四枚 色は薄いオレンジ
花ことばは知らないけれど
いつも風にゆれている

そこに
見えない花が咲いている
ぼくにだけしか見えない花が咲いている

だから
さみしくなったら
ぼくはいつでも帰ってくる

                          寺山 修司 『見えない花のソネット』
                          「少女詩集」(角川書店)




心を凝らして 肉眼では見えない花を 見つけることができたら
世の中のどんな汚水や飛沫(ひまつ)を浴びても
ひとは つねに美と謙虚へと立ち戻れます
その花は ひとりひとり色も形も香りも異なることでしょう
あなただけにしか見えない花…足もとに見いだせますか?☆



2008-02-17(Sun)

裡なる夢の都

Stormy ocean

こめかみの裏がわに
折りたたまれて しまわれている地図
不眠の夜
ひろげてもひろげても まだたたまれている部分があって
どうやらそこには
夢の都がしるされているらしいのだが

とほうもなくひろがるのは
(や)せた土地や 船影もない荒磯(ありそ)ばかり
花も咲かず 鳥も飛ばず
こんなにさびしい風景は
この世のどこにも見あたらない

誰も はいりこめない
誰をも 誘い入れられない
ひとりで歩むよりほかない いくすじかの径(みち)
時として 稲妻のよう 痛みがはしり
こめかみに青く 透(す)けて見える

                      新川 和江 『こめかみ』
                      「新川和江全詩集」(花神社,2000年)




わたしたちの奥深くに 日頃は折り畳まれてしまわれ
本人も存在を自覚しないままの地図…
不眠の夜でもなければ 慌しい日常にまぎれて開いてみようともしない地図…

ゆっくりとその地図をたどってみれば
あなたしか入れない あなただけの裡(うち)なる夢の都が拡がっているでしょう
どんなにそこが索漠(さくばく)とした寂しい場所でも
ただひとりで 歩み入ってみるしかないのです
真の自分を知るために…☆








2008-02-16(Sat)

裸木のように

bare tree

葉を落した大銀杏(いちょう)
休暇の取り方

どこかへ慌てて旅立ったりしない
同じ場所での静かな休息

自分から逃げ出したりしないで
自分に同意している育ちの良さ

裸でいても
悪びれず

風のある日は
風を着膨(きぶく)れています

                              吉野 弘 『短日』
                              「吉野 弘全詩集」(青土社)




自らの外を覆い隠すものを すべて削(そ)ぎおとした冬の裸木(はだかぎ)
凛とした潔(いさぎよ)さ…
裸の自分を恥じることなく曝(さら)して悪びれない毅然とした立ち姿…

真の自分を曝すことからも 見つめることからも逃げたいわたしたちは
そのために慌ててあちこちへ旅立とうと右往左往したり…
人をなじったり…あらゆるもので自分を飾ったり…
日々の生活がどんなに騒がしくとも 裸木のように
静かに同じ場所で呼吸し 休息できるようになりたいものですね☆




2008-02-15(Fri)

さよならがいえない

biker in the sunset

少しずつ
言葉をおぼえていった幼い頃
わたしは
こんにちは と さよなら

どちらを先に
口にしたのだろう
いまでも
さよなら が上手に言えない
わたしは

                          川崎 洋 『さよなら』
                          「川崎 洋詩集」(ハルキ文庫)



新しい人やものや状況との出会いを受け入れ
こんにちは の挨拶をするのは だれにとっても簡単なことです
でも さよならするのは 何に対してでも いつもそれより数倍むずかしい
そして なによりも いちばんむずかしいのが
時至ったときに この人生に上手にさよならをいうことなのでしょう☆




2008-02-14(Thu)

残されているもの

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それでもやはりすばらしい
肉体の生み出す塵(ちり)

この光の誕生
睫毛(まつげ)の内懐(うちぶところ)での


そう
まだ残されている
多くの言うべきことが

                         ローゼ・アウスレンダー『まだ残されている』
                         加藤 丈雄 訳



Dennoch herrlich
Staub aus Fleisch

Diese Lichtgeburt
im Wimpernschoß

Lippen
ja
es bleibt noch
viel zu sagen

                     Rose Ausländer “Es bleibt noch"



わたしたちの肉体が塵(ちり)に帰する虚しいものだとしても…
それが確固たる自らの存在だと思うのは幻想に他ならないとしても…

それでも この塵のような存在から生み出される<よきもの>も残っているのです
エゴの反映を排除し 真の光に洗われた視力でみつめるこの世界…
そして 真の英知に満たされた唇から出る言の葉…☆



2008-02-13(Wed)

境界を越える前に

mount bhagirathi

この自我の殻を やすやすと脱がせてください――
意識の耀(かがや)く光に
濃霧をつきやぶって
真理の永遠の<すがた>を顕示させてください。
人みなのただなかにあって
永遠なる一者の歓喜の光明(ひかり)
わたしの心にともしてください。
この世の騒乱を超えた静かな天国(くに)
永遠の平和の<かたち>を見させてください。
なんの意味をももたない人生の煩雑さ、
社会の人為的な価値に乗じる虚偽――
そうしたことで 心貧しく騒々しい世俗の人びととは訣別して
この生命(いのち)のほんとうの意味を 澄んだ<まなざし>で悟らせてください――
この世の境界(さかい)を越えてゆくまえに。

                    ラビンドラナート・タゴール
                    「恢復期」より 森本 達雄 訳


  *註:<>内は本来の訳詩では傍点となっています



死を大いなる自然の巡りの一部としてとらえ 輪廻転生による未来世を信じる
ヒンドゥーの死生観を反映したインドの詩人タゴールは
肉親を四人続けて失った四十代の頃から つねに死をみつめてきました

この詩は病に倒れ 自らの死をいっそう強く意識した晩年のタゴールの
わずかな小康状態を得た時期に書かれたものです
この詩が書かれた7ヵ月後に彼は天へと帰っていきました
死を主題とした数々の詩の中でも際立って美しい祈りがここにあります☆





2008-02-12(Tue)

爆ぜる火を前に

Close-up of fire and flames

青空がぼくを見捨てたので、ぼくは火をおこした。
その友だちになるための火、
冬の夜の仲間入りをするための火、
よりよく生きるための火を。

ぼくは昼がぼくに与えたすべてのものを火に与えた、――
林、藪、麦畑、葡萄畑、
鳥の巣と鳥たち、家々とその鍵、
昆虫、花、毛皮、祝祭のことごとくを。

パチパチ爆(は)ぜる炎の音だけでぼくは生きた、
炎の熱のにおいだけで。
ぼくはとざされた水に沈んでゆく船のようだった、
死者のようにぼくはただ一つの元素しか持たなかった。

                      ポール・エリュアール 『ここで生きるために』
                      山崎 栄治 訳




青空や太陽を見失って 闇の中に放り出される日々が人生には必ずあります
そのときは 自ら火をおこして これまで得たすべてのものを
いったん燃やしてしまわねばならないのです
よりよく生きるために…

すべてを潔く炎にくべたとき 勢いよく爆ぜる炎の匂いや熱の中から
沈みゆく船のようなわたしたちを新生させるエネルギーがもたらされるでしょう☆





2008-02-11(Mon)

ひとり

Seagull

いろんなとりがいます
あおいとり
あかいとり
わたりどり
こまどり むくどり もず つぐみ

でも
ぼくがいつまでも
わすれられないのは
ひとり
という名のとりです

                          寺山 修司 『ひとり』
                          「少女詩集」(角川書店)




群れ集う鳥よりも 大空高く孤影を引いて飛んでいく鳥が
ひとの心に訴えるのはなぜでしょう
心弱ったとき 迷ったとき… 
きっぱりと“孤”を選んで毅然と飛翔する姿に力づけられるからでしょうか☆
S・デ・ラ・クルスの『孤独な鳥の条件』(2007/9/27掲載)と呼応するような詩です




2008-02-10(Sun)

羽ばたく心

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鳥をみて
ふしぎがあふれてくる
鳥をみつめて
祈りを深める
鳥を目で追って
こころがはばたく
鳥をみあげて
のぞみを新しくする
鳥を聞いて
ふいにすなおになる
鳥をあおいで
光さすほうへさそわれる
鳥とむきあって
いま
つつましくなっている

                          川崎 洋 『鳥』
                          「川崎 洋詩集」(ハルキ文庫)




何も考えずに ちいさな生きものをみつめていると
心からあらゆる雑事を追い出し しんと空にすることができます
そうして再び 無心に空を 天を 仰ぐ気持を取り戻したりします
それには やはり小さな鳥の存在がいちばんふさわしいかもしれません
なぜって 彼らには翼がありますから…☆




2008-02-09(Sat)

地上の天球

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やわらかい球体の星座

私にどうか
心おちつかぬ
つかのまのあいだ

風が
あなたを吹き放つまえに

私にどうか
あなたの数学的
神秘を
たたえさせてください
                           ローゼ・アウスレンダー『たんぽぽ』
                           加藤 丈雄 訳



Astralzarte Kugel

laß mich
einen unverläßlichen
Augenblick lang

eh der Wind
dich entratmet

laß mich
dein mathematisches
Wunder
rühmen
                     Rose Ausländer “Löwenzahn"




たしかに タンポポは白い星々で象(かたど)られた天球に見えます
ネイティブ・アメリカンの人々は 人のスピリットが天に昇るとき
タンポポの綿毛を手に高く高く昇っていくと 表現しました

この地上という幻想と幻覚に満ちた球体の上につなぎ止められたわたしたちの心が
いつか解き放たれて 高みへと自由に飛び立つとしたら
その綿毛を吹き放つのは いわゆる聖霊の息吹なのでしょうか☆





2008-02-08(Fri)

頁の彼方に

compass over old Canadian map background

書物のなかに海がある
心はいつも航海をゆるされる

書物のなかに草原がある
心はいつも旅情をたしかめる

書物のなかに町がある
心はいつも出会いを待っている

人生はしばしば
書物の外ですばらしいひびきを
たてて くずれるだろう
だがもう一度
やり直すために
書物のなかの家路を帰る

書物は家なき子の家

                          寺山 修司 『あなたに』
                          「少女詩集」(角川書店)





書物の行間の彼方には 限りなく豊かで広大な世界が拡がっています
身体が種々の制約によって たとえ一歩も外界に出られないときでも
ひとは 書物のページの彼方へ足を踏み入れることで
果てしない驚きとドラマに満ちた旅をすることができます
想像力の翼に乗って…☆

活字の世界に親しむ習慣の衰退によって
心の源泉への旅をする想像力という鍵を失ってしまったから
いまの子どもたちは 容易に崩壊してしまうのかもしれません
暴力的なゲームや瞬時に移り変わる情報の迷路のなかに囚われたまま…☆




2008-02-07(Thu)

あおむけで眠りたい

SleepingBoy

死の時には私が仰向(あおむ)かんことを!
この小さな顎(あご)が、
小さい上にも小さくならんことを!
それよ、私は私が感じ得なかったことのために、
罰されて、死は来るものと思ふゆゑ。
ああ、その時私の仰向かんことを!
せめてその時、私も、すべてを感ずる者であらんことを!

                      中原 中也 『羊の歌 I 祈り』


DID YOU SLEEP WELL?
いつの日にか あおむけで眠りたい…

あしたを眺めていた 遠くで眺めていた
そこには悲観が転がっていた
先には小さな花がついていた…

DID YOU SLEEP WELL?
あの日のまま あおむけで眠りたい…

                      Lyrics by 吉井 和哉 『カナリヤ』(抜粋)




苦悩や屈折した心を抱えているとき
体に偏った疲労を溜め込んでいるとき
ひとは胎児のように体を丸め 横向きに眠るのではないでしょうか
とことん疲れてしまったときには
倒れ伏すように枕を抱え うつ伏せで眠るひともいます

仰向けは 天を仰ぎ 天とまっすぐ向かい合う姿勢です
死の床で あるいは悲観に彩られたうつむき加減の日々に
仰向けで眠りたい と願うのは 天をまっすぐ仰ぎたいという希求なのでしょう☆




2008-02-06(Wed)

天使の贈りもの

Angel sculpture in public cemetery

なにがてんしからのおくりものか
それをみわけることができるだろうか

はなでもなくほしでもなく
おかしでもほがらかなこころでもなく

それはたぶん
このわたしたちじしん……

                         谷川 俊太郎 『天使とプレゼント』
                         ―der Engel und die Becherung, 1939
                         「クレーの天使」より





自分の存在こそが 天からの贈りものだと思えるひとは
愛すること 愛されること 守られていることを 心から信じることができるでしょう
いまだにギフトをもらっていることに気づいていないひとは
リボンをほどいてみることさえしないで 嘆いていたりします☆





2008-02-05(Tue)

レクイエム

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今宵(こよい) 寝入りばなに夢をみた
あまり胸にこたえる光景だったので
いまだに涙がとまらない;
わたしを残して逝(い)ってしまった
大事なあの子の夢だったから

あの子を求めて 天国の高みをさ迷っていると
愛らしくおとなしい子どもたちが
並んで歩いているのに出会った
どの子も百合の花のように純白な衣を着て
手には明るく燃える灯火をかざしていた
どの子もはっきりこちらを向いているのに
だれも口をひらこうとはせず 粛然(しゅくぜん)と歩いていた

やがて わたしのあの子がやってきた
あの子は なぜか少し悲しげにみえた
皆と同じ灯火は手にしていたが
なんと あの子のだけ 灯りがともっていないのだ!
疑惑で胸もつぶれそうなわたしに
あの子は 少し顔をそむけながら こういった
“母さんの涙で消えちゃったんだ”
“だから お願い もう泣かないで”

                         ウィリアム・バーンズ 『ある母親の夢』
                         訳詩©Luminas 2008


I'd a dream to-night
As I fell asleep,
Oh! the touching sight
Makes me still to weep:
Of my little lad,
Gone to leave me sad,
Aye, the child I had,
But was not to keep.

As in heaven high,
I my child did seek,
There, in train, came by
Children fair and meek,
Each in lily white,
With a lamp alight;
Each was clear to sight,
But they did not speak.

Then, a little said,
Came my child in turn,
But the lamp he had,
Oh! it did not burn;
He, to clear my doubt,
Said, half turned about,
'Your tears put it out;
Mother, never mourn.'

             William Barnes “The Mother's Dream"





愛する家族に先立たれた悲しみは 容易に癒されるものではありません
けれども いつまでも悲嘆にくれることは
彼らの手にする灯火をくもらせ 旅立ちを妨げることになるのでしょう
新しい高みへと昇っていこうとする彼らの旅を 信じて見守ることが
難しいけれども なによりの祈りのかたちなのでしょう☆





2008-02-04(Mon)

寄せては返すもの

wave_1648908

あのときああすればよかったと
そんなやくざな仮定法があるばっかりに
言葉で過去を消そうとするけれど
目前の人っ子ひとりいない波打ち際は
目をつむっても消え去りはしない

せめて上手に後悔しようと
過去を苦い教訓に未来を夢見る事は
あの日のあなたのかけがえのない
こわれやすい愛らしさを裏切ることになる
くり返す波の教えるのは
ただの一度も本当のくり返しは無いという事
けもののように言葉をもたなかったら
このさびしい今のひろがりを
無心に吠えながら耐える事もできようものを

                      谷川 俊太郎 『後悔』
                      「谷川俊太郎詩選集」集英社文庫




また同じことを繰り返してしまった…と 嘆くことや
あのとき ああすれば こうはならなかったのに…と 後悔すること
わたしたちの日常は その繰り返しであるともいえるでしょう
でも おそらく まったく同じ繰り返しはないのです
いつまでも同じように寄せては返す波が その寄せ方砕け方に
ひとつとして同じものはないのと同様に…☆







2008-02-03(Sun)

思い出がめくれる

Wind pump 4

私は何処(どこ)へ 行くのでしょう
人生は荒野だ とはいっても
歩いて行かない わけにはいかないのです
風のつよい日 灌木(かんぼく)のしげみがさわいで
わたしの髪も みだれました

日も 月も 流れて行きます
愛もまた流れ去る とはいっても
愛なしで生きて いけるでしょうか
風のつよい日 思い出がめくれて
(い)えたはずの傷がまた いたみました

白い道は どこまでも つづいています
人生はひとつの旅だ とはいっても
小鳥のようにとまる枝が あってのことでしょう
風のつよい日 遠くの野には花があると
じぶんにいい聞かせて 歩きました

                      新川 和江 『私は何処へ』
                      「新川和江全詩集」(花神社,2000年)




人生の荒野を旅する道程には 風の強い日がたびたびあります
強風が砂つぶてを吹きつけて視野をくらませ 進路を迷わせることもあるし
心の表皮を手荒にまくって そっとしまっておいた思い出をむき出しにして
とうに癒えたはずの傷みを引き出すことも…
それでも 黙々と歩きつづけていれば いつか花咲き乱れる野原に行き着くでしょう☆





2008-02-02(Sat)

真昼の空の奥に

blue sky and star light

ひかえめな 素朴な星は
真昼の空の 遥(はる)かな奥に
きらめいている
目立たぬように――。

はにかみがちな 綺麗(きれい)な心が
ほのかな光を見せまいとして
明るい日向を歩むように――。

かがやきを包もうとする星たちは
真昼の空の 遥かな奥に
きらめいている
ひそやかに 静かに――。

                              吉野 弘 『真昼の星』
                              「吉野 弘全詩集」(青土社)




星はいつだって同じ空に 同じ光度で輝いているのに
わたしたちは 暗い夜空の背景がないと その存在や輝きを忘れています
素朴に輝く綺麗なものは 日向や真昼の空の奥に隠れているのですね
それは 蛍光灯の下でまばゆく光る宝石の人工的な輝きのようには
人目に立たないものなのでしょう☆
2008-02-01(Fri)

海のはじまり

shutterstock_2564549

ひとはみな
心のなかに海をひとつ もっている
その 濃いみどりの海のうえに
ときどき ちいさな魚がはねて
ときどき ちいさなしぶきがたつ
ひとの心のなかに  いつ 海はうまれたか

おそらく むかし
――なにが悲しいのか  わからないほど ちいさく
   なにがつらかったか 忘れてしまうほど むかし
ひとはみな はじめてまるい口をあけて泣いた
あのときの涙の粒が 海の はじまり

泣くたびに流れた塩からい涙は
だれにも知られぬ場所に   あふれあふれ
――それはたしかに 悲しみの波
   それはたしかに つらさのうねり
それはたしかに そうなのだが
ごらん いつのまにか
涙の海に 生まれてそだった  泳ぐものたち
笑い 歌い そして遊ぶ 泳ぐものたち

ひとはみな いつだって
塩からくて にぎやかな  海を 抱いて いるのだ

                     工藤 直子 『海のはじまり』
                     「ともだちは緑のにおい」(理論社,1988年)




ものごころつく前から 数えきれないほどの涙を流しつづけて
わたしたちの心のなかで 豊かな海に育ったとしても不思議はありません
塩からく 悲しみの波やつらさのうねりが しじゅう押し寄せるとしても
よくみれば 色とりどりの生きものが いつのまにか彩っているのです
涙のなかの微細な栄養分が育てた生きものたちです
海が荒れても 海が凪(な)いでも 笑い 歌い 遊ぶ…
そんなにぎやかな海だから ときどき きれいな涙の粒でうるおしてあげましょう☆





プロフィール

ルミナス

Author:ルミナス
"あなた本来の光と輝きを取りもどすために…”
セラピースタジオ ルミナーレにおいて,
スピリチュアル&ボディの両面から,各種セラピーを行っています.

<セラピースタジオ ルミナーレHP> http://www.luminare.jp
<セラピースタジオ ルミナーレブログ> http://blog.goo.ne.jp/luminare001/

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